冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「ライラさまから聞いていらっしゃるかもしれませんが、結婚宣誓書は無事に陛下からご署名を頂戴し受理されましたよ」

「そうか」

「ご結婚、おめでとうございます」

 スヴェンの受け取り方はまるで他人事だった。とても自分の話とも思えない様子でマーシャからの報告を聞いている。

 そして自分にも言われた台詞を同じくスヴェンに告げているマーシャに、ライラは口を挟もうと試みた。

「あの、私は」

 そこでスヴェンの漆黒の瞳がライラを捉えた。鋭い眼差しは、言いかけたライラの言葉と共に息も呑ませる。

 スヴェンはライラに近づくと、マーシャに見せつけるようになにげなく彼女の肩を抱いた。大きな手が肩に触れ、ライラの心臓は跳ね上がる。

「彼女はこちらで引き受ける。ご苦労だったな」

「いいえ。私が申し上げる前に、ライラさまがご自分でスヴェンさまの元にいらしていたこと、とても嬉しく思います」

「それは……」

 昼間の件を改めて謝罪して、さっさと部屋に戻ろうと思っていたライラとしては、純粋に喜んでいるマーシャに今更、事情を告げるのはどうも心苦しい。

 部屋に入るつもりもなければ、ここまで長居するつもりもなかったのに。

「では、朝の身支度はこちらに参りますね。日中は客室の方を使いましょうか。スヴェンさまも職務がありますでしょうし」

 マーシャはこれからの段取りをてきぱきと進めていく。そして一通り明日の予定をすり合わせてからふたりに深々と頭を下げた。
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