冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「これは、これは。アルノー夜警団の方が何用でしょうか?」

 しゃがれた声でファーガンは答える。顔には笑みを浮かべているが、薄っぺらく貼りつけたようなものだった。

「あなたではなく、あなたの客人に用があるんです」

「はて、なんのことでしょう?」

「心当たりはあるはずだ。それとも客人という呼び方が正確ではないかな?」

 穏やかに、けれど徐々に声を低くしながらルディガーは相手を追及していく。

「できれば事を荒立てたくはない。家の中を見せてくれないか?」

「それは出来ませぬ。私はなにも悪いことはしていない。どうかお引き取りを……」

 そのときドアを閉めようとするファーガンの体が突然よろめく。スヴェンが強い力でドアを引いて強引に開け、なにも言わず中に足を進めた。

「待て、誰の許可を得て」

 制するファーガンをスヴェンは一瞥する。

「お前は金に困っている相手にいいようにつけ入り、とんでもない額の利子をつけて私財を肥やしていたらしいな。数件訴えが出ている。その件について連行してもかまわないんだ」

 言い捨てて迷うことなく階段を上っていくスヴェンに、懇願するような悲痛な叫び声が館に響いた。

「やめろ、上には行くな。そこには、私の……」

「セシリア!」

 ルディガーが副官の名を呼び、戻って来たセシリアは状況をすぐに察した。ファーガンを取り押さえる形で足止めし、ルディガーは足早にスヴェンの後を追う。
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