冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
勢いよく階段を駆け上がり二階へ向かうと、奥にある部屋の前では先ほど対応した使用人の女性がドアを守るように立ちふさがっていた。
「どうか、どうかお許しください。旦那さまの希望を奪わないでください」
ガタガタと体も声も震わせ、祈るように身を縮める彼女をスヴェンは顔色ひとつ変えず見下ろす。そして彼女の肩に手をかけ軽く横へ押しのけると、女性はあっさりとドアの前を空けた。
「スヴェン、あまり手荒な真似は……」
ルディガーの小言を聞き流し、木製の豪華なドアを開ければ中には小さな蝋燭の明かりがひとつ。先ほどスヴェンが見遣った窓からは眩い月の光が差し込んでいる。
窓際にはひとりの女が立っていて外を眺めていた。年は十七、八ほど。まっすぐな栗色の髪は背中まで伸び、肌の露出を極力抑えた土埃色の控えめなドレス姿はまるで修道女だ。
長い髪が顔の半分を覆うように隠し、だからこそ合間から覗く肌の白さが際立つ。
そして彼女の視線がゆっくりとスヴェンに向けられた。驚きで目を見開き、首を傾げた女の顔にかかっていた髪が滑る。奥にあった瞳が姿を現し、それを見てスヴェンは息を呑んだ。
「なんということだ、だから陛下は我々を……」
後から部屋に入ってきたルディガーが先に口を開き嘆声を漏らす。
片眼異色。彼女の瞳の色は左右で異なっていた。それだけならたいした問題ではない。肝心なのはその色だ。
右目はわりと一般的なダークグリーンなのに対し、左目は空に浮かぶ月を映したかのようなくっきりとした金眼だった。まるで――。
「どうか、どうかお許しください。旦那さまの希望を奪わないでください」
ガタガタと体も声も震わせ、祈るように身を縮める彼女をスヴェンは顔色ひとつ変えず見下ろす。そして彼女の肩に手をかけ軽く横へ押しのけると、女性はあっさりとドアの前を空けた。
「スヴェン、あまり手荒な真似は……」
ルディガーの小言を聞き流し、木製の豪華なドアを開ければ中には小さな蝋燭の明かりがひとつ。先ほどスヴェンが見遣った窓からは眩い月の光が差し込んでいる。
窓際にはひとりの女が立っていて外を眺めていた。年は十七、八ほど。まっすぐな栗色の髪は背中まで伸び、肌の露出を極力抑えた土埃色の控えめなドレス姿はまるで修道女だ。
長い髪が顔の半分を覆うように隠し、だからこそ合間から覗く肌の白さが際立つ。
そして彼女の視線がゆっくりとスヴェンに向けられた。驚きで目を見開き、首を傾げた女の顔にかかっていた髪が滑る。奥にあった瞳が姿を現し、それを見てスヴェンは息を呑んだ。
「なんということだ、だから陛下は我々を……」
後から部屋に入ってきたルディガーが先に口を開き嘆声を漏らす。
片眼異色。彼女の瞳の色は左右で異なっていた。それだけならたいした問題ではない。肝心なのはその色だ。
右目はわりと一般的なダークグリーンなのに対し、左目は空に浮かぶ月を映したかのようなくっきりとした金眼だった。まるで――。