この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
俊介はイジワルな笑みを浮かべる。
だけどやっぱり、私のためだ。


「里穂、カバン貸してみ?」
「いいよ」


今度は稔が遠慮する私のカバンを持とうとするので首を振る。


「俊介にリードされてばかりではつまんないし」
「ん?」


どういう意味?

稔の放った言葉に、俊介が一瞬顔をしかめる。
でも、すぐにいつもの表情に戻った。


ふたりに抱えられるようにして歩道橋の階段をゆっくりと上がる。

まるで重病人のようにふたりから優しくされて、涙が出そう。

階段を上りきり少し空が近くなったところで、俊介が足を止めた。


「平気?」
「うん。情けないね。毎日通学してるのに酔うとか」
「里穂は見かけとは違ってデリケートだから仕方ないんじゃない?」


俊介の発言に目を見張る。


私のこと『デリケート』って言った? 
『デリカシーがない』とかの言い間違いじゃなくて?
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