この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「『見かけとは違って』ってどういう意味!?」


うれしかったのに照れくさくて、そんな言い方になってしまう。


「元気そうだ」
「あ……」


たしかに。
電車を降りてから、急激によくなっている。

やっぱりあの匂いがダメだったみたい。


「ホントだ。よかった」


稔も安堵の声。


「ごめん、ありがと」
「俺たちがお前の世話を焼くのは当たり前なんだから、『ごめん』はいらない」


ただ近所に住んでいるだけなのに、どうして『当たり前』なのかはわからない。

でも、俊介のその発言は胸にじーんときた。
大切にしてもらえていると感じたからだ。


「そ。余計な心配はいらないよ。俺たちもいつも助けてもらってるんだし」


稔が続くが、なにを助けているというの? 
心当たりがない。


「私、なんかしてる?」
「んー、そうだなぁ。俺たちが陸上に打ち込んでいい成績を残したいと思うのはなんでだと思う?」


稔の質問に首を傾げる。
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