この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「いい成績を取るとうれしいからじゃないの?」


私が返すと、俊介が小さく噴き出したあと口を開く。


「そうそう。うれしいからだ」


俊介は私の頭をクシャッと撫でてから歩き始めた。
ゆっくりと、私を待つように。

あれ、違った?


「稔、カバンありがとう」
「今日はお嬢さま待遇してあげるよ。ほら、行くよ」


カバンを受け取ろうとしたのに、拒否されてしまった。

私はふたりの心遣いに感謝しながら学校へと向かった。



校門をくぐると大きなふたりに挟まって歩く私に、チラチラと視線が降り注ぐ。

もう慣れっこではあるけれど『どうしてあんなかわいくもない女子が、一緒に歩いてるの?』という心の声が聞こえてくる。

というのもふたりは、その容姿と陸上の記録からあっという間に有名になり、女子生徒から何度も告白されているから。

まだ入学して三カ月だというのに、モテ男はすごい。
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