この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
高校受験と陸上と天秤にかけ、陸上から離れていく友達がほとんどの中で、彼は『絶対に両立させる』と両親に宣言し、受験前日も練習していたというすごい人。

そしてもちろん高校も合格を勝ち取った。

稔はさすがに半年は受験に専念したのに。


「どうしてそんなに必死なの? 走り込みもきついでしょ?」


私は率直な意見をぶつけた。
すると彼はふと足を止める。

な、なに?


「きついよ。けど、俺がタイムを伸ばすたび、キラキラした顔して喜んでくれるヤツがいるから」


彼はいつになく真剣な顔。

それって、もしかして……私?

悪態をつかれることには慣れているけど、こんなことを言われてもなんと返したらいいのかわからない。


「えっと……」
「なんてな」


彼は一転、クスクス笑いだした。

からかわれてる?


「もー、俊介は顔はいいのにそういうとこダメ」
「なんだ、俺のこと好きなの? 素直に言えばいいのに」


そう追及され、息が吸えなくなる。
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