この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
焦りながら言い返してみたものの、鼓動が速まり息が苦しい。


「あはは。里穂、耳真っ赤」


指摘され慌てて両手で耳を押さえると、「プッ」と噴き出している。

なんなのよ、もう! 
好きなんだからしょうがないじゃない。

恥ずかしすぎて視線を合わせられない。私はさっさと歩きだした。


「怒んな」
「からかわれてばかりじゃ、怒るでしょ?」
「好きな子にはイジワルしたいってやつかもしれないじゃん」


俊介はサラッとそんなことを口にするけれど、私は耳だけでなく顔まで真っ赤になっているような気がして、顔をそむける。

『好きな子』だったらうれしいのに。


「ごめんって。な、宿題いっしょにやろうぜ。朝、冷蔵庫にダブルシューあるの見つけたし」


彼が言う『ダブルシュー』とはカスタードとホイップが両方入った大きなシュークリームで私の大好物。

でも、食べ物で許してもらおうと? 
私はそんなに単純じゃないんだから!
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