この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
本棚の上に大きな松ぼっくりが置かれている。

小さな頃近所の神社で拾ったことを思い出したけど、まさかそれじゃないよね。


「お待たせ」


黒いVネックTシャツを着た俊介が、お盆にジュースとシュークリームを乗せて持ってきた。


「ありがと」
「それ、懐かしいだろ? 押し入れごそごそしてたら出てきたんだ」


それじゃあ、あのときの松ぼっくり?


「えー、捨てなかったの?」
「捨てるわけないじゃん。お前との大切な思い出なんだし」


それを聞き、頬が緩む。

あの楽しかった時間を、俊介が『大切』と言ってくれるのがうれしい。


「ほら、ダブルシュー」
「うん」


彼が小さなテーブルに置いてくれたので、私専用になっているクッションに座った。

そういえば、あんなに告白されているのに、彼女がいたことがないのはどうしてだろう。

もし彼女ができて、このクッションを使われたら、ショックかも。
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