この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「えー、頑張ったのに!」


口を尖らせると、彼は私の髪に指を入れ、三つ編みを一瞬でなかったことにした。


「里穂、シャンプー変えた?」
「えっ?」


彼は私の髪を一束すくい、鼻の近くに持っていく。

なに、してるの?

突然のことに驚き、心臓がバクバクと音を立て始める。

泣き虫俊介は鳴りを潜め、今は王子さまなんだから、こんなことをされたらドキドキもするでしょ。


「なに使ってる? 俺も気に入ったからこれにするわ。商品名教えろ」
「お、お母さんに聞いてよ」


本当は、薬局で香りの見本が気に入り自分で買ってきたのでわかっているけど、なんとなく照れくさくて言えない。

だって同じ匂いなんて……。


「帰りにボトル見せろよ。それより、里穂はせっかく髪がサラサラなんだから余計なことすんな。これで十分だ」


本気で同じシャンプーを買うつもり? 

いや、それより……。
もしかして私の髪を褒めてくれた?
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