この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
必死に自転車をこいだものの、学校を目の前にしての緩やかな坂道が私を苦しめる。

これは想像以上にきつい……かも。
でもそんなことは言っていられない。


「里穂、降りるよ」
「まだいける!」


とはいえ、もう足がガクガクだ。
あぁっ、もっと鍛えておくんだった。


「里穂!」


そのとき、向かいから俊介が走ってきた。

五キロ全力で走ったばかりなのに、すごい体力だ。

私が自転車を止めると稔は下りたものの、立っていられないのか、フラッと倒れ込む。


「稔! どうした?」


駆け寄ってきた俊介が、すぐに稔を支える。


「ちょっと変で……。やっぱり疲れかな?」
「無理しすぎだ。里穂、自転車借りる」
「うん、お願い」


私は俊介にあとを託してふたりを見送った。

グラウンドに戻ると、ふたりは保健室に行ったあとで、私もすぐに向かう。


「稔!」
「貧血かなぁ。ちょっと足元がふらついてるわね。今、家の人に電話をしたから、すぐに迎えに来てもらえるわ」
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