この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
養護の先生の言葉に、ホッとした。

彼が貧血なんて初めてだけど、それだけ練習に熱を上げていた証拠だろう。

最近の不調も貧血のせいだったのかもしれない。


「俊介、里穂、悪かったね」


ベッドに横になったままの稔がお礼を口にするので首を振る。

こんなときに、私たちに気なんて使わなくていいのに。


「いつも稔が助けてくれるじゃない。私たちが稔を助けるのも当たり前なんだから」


そう口にすると、彼は口元を緩めてうなずいた。
でも、顔色がどんどん悪化しているように思える。



心配でたまらなかったけど養護の先生が帰るように促すので、その日は俊介とふたりで家に帰ることにした。


いつもはくだらない話をするのに、稔のことが心配で電車でも押し黙りうつむいていた。

貧血かもしれないと聞き一旦は安心したけど、大切な人が倒れて平気でいられるわけがない。

胸が押しつぶされるように苦しい。
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