この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
隣に座った俊介はそんな私を見て頭をポンと叩いたものの、彼もまた心配げな表情を浮かべなにも言わない。


駅を出て家まで十分。
稔の家の前を通ったけれど、いつも停めてある白い車がない。

おばさんが迎えに行ったんだろう。



私と同じように車がないことに気づいた俊介は、不意に私の手首をつかみ、すごい勢いで歩きだす。

そして、昔よく遊んでいた公園へ向かった。



幼い頃は、俊介とふたりでよくかくれんぼをしていた。

狭い公園なので隠れるところなんて限られていてすぐに見つかってしまうのに、私たちはそれが楽しくてたまらなかった。

俊介とふたりなら、なんでも楽しかった。



稔が転校してきたあとは、よくここで俊介と稔がかけっこの競争をしていた。

たった十メートルほどの距離を、私の『よーい、どん!』という掛け声に合わせて走った。

今でも、あの遊びのおかげでふたりともスタートの反応速度がいいなんて話になる。
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