この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「なんだ、聞こえなかったのか。耳掃除しとけ。それじゃ」


彼は照れ隠しなのか、いつものような悪態をついてから家の中に入っていった。


「守って……」


俊介に言われた言葉を繰り返す。

そういえば、小さい頃私が泣くと、彼はいつも『よしよし』と頭を撫でてくれたっけ。

もしかして稔のことが心配で泣きそうだった私に気づいて、ああしてくれたのかな。

わざわざ公園まで足を運んだのは、『今までだって大丈夫だっただろ?』と言いたかったのかもしれない。


彼が入っていってしまった関戸家の玄関のドアをボーッと見つめ、そんなことを考えていた。



稔から連絡が入ったのは、翌朝のことだった。

三人でグループを作っているメッセージボックスに、メッセージが届いたのだ。


【昨日は心配をかけたね。病院に行ったけど原因がわからなくて、とりあえず貧血ではなさそうだ。多分無茶しすぎて酸欠だったんだろうって。まだ少しふらつくから、今日は休むわ】
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