この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
彼が私を褒めることなんてまずないので、目をパチパチして固まる。


「なにボサーッとしてる。稔(みのる)が怒るぞ」
「あっ、待ってよ!」


長い足をスタスタと前に進める俊介には小走りにならないと追いつけない。


毎朝の登校は、もうひとり、近所に住んでいる糸井(いとい)稔も一緒。
彼の家は私たちの家から駅の方向へ五分ほど歩いたところにある。



稔は小学4年生で転校してきた。

俊介と同じように足が速く、5年生のときに陸上部に一緒に入部して頑張ってきた仲間。

ちなみに俊介は短距離で、稔はハードルを専門としている。


背は俊介より五センチほど低いものの、すらっとした長い手足を持っている。

少し癖のある髪をうまくまとめていて、目はたれ目気味ではあるけど大きく、俊介に劣らないイケメンぶり。

彼もまた今年はクラスが違うものの同じ高校に通っていて、長い時間を共にしてきた幼なじみ。

私はふたりの影響で、今は陸上部のマネージャーをしている。
< 4 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop