この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
といっても新米も新米。
毎日右往左往しているというのに、ふたりはもう先輩たちから一目を置かれるような存在になっている。


「遅いぞ」


稔は家の前で待ち構えていた。


「悪い。コイツが寝坊しやがった」
「寝坊なんてしてないから!」


俊介の嘘に反論したものの、ふたりは気にすることもなく歩き始める。

ねぇねぇ、なんか反応してよ。


「なぁ、今日の練習メニュー見た?」
「うん、ずっとランニングって、一番つらいやつじゃん」


稔の問いかけに、俊介がため息をついている。

延々とランニングは入部してから数回あったが、ため息をついているくせして、ふたりはいつも先頭集団で部を引っ張っていた。

身体能力が高いのに加え、根性も一流。
そんなふたりは私の自慢だ。

だけど!


「ねぇ、ここにかわいい女の子がいるんですけど、無視ですか?」
「えっ、どこどこ?」
「ここ!」


大げさにキョロキョロしてみせる俊介に、自分を指さしアピールするも、「小さくて見えなかった、ごめんごめん」と棒読みされる始末。
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