この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「面会謝絶……」


思いがけない事態に言葉が続かない。
やはり、ひどいんだ。


「あの、ご家族がいらっしゃるかと。ご家族には会えますか?」


俊介が機転を利かせてくれて、病棟に問い合わせを入れてもらうことができた。


それから待つこと十分。
おじさんが下りてきてくれた。


「俊介くん、里穂ちゃん。昨日は本当にありがとう。家内だけでは動転してなにもできなかったと思う」


私たちに頭を下げるおじさんだけど、その目が真っ赤に腫れあがっていてドキッとする。

おじさんがこんなに泣くほど、稔の状態は悪いの?


「いえ。おじさん、稔は……」


俊介が切り出すと「ちょっとこっちへ」と促され、病棟に設けられた待合室へと向かった。

そこに設置されているイスに俊介と並んで座ると、おじさんが向かいに座り口を開く。


「稔の検査はまだ続いていて、正式な病名が出たわけではないんだけど……」


おじさんの口ぶり重くて、緊張感が高まっていく。
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