この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「どうやら、脳腫瘍であることは間違いないようなんだ」
「脳腫瘍……?」


嘘。そんな……。
だって昨日まで部活にも出ていたじゃない。

そりゃあタイムは伸びていなかったかもしれないけれど、それでも速かったんだよ?

体が勝手に震えだし、自分では抑えられなくなる。
するとそれに気づいた俊介が、手を握ってくれる。


「俊介くんが右目のことを教えてくれたんだって?」
「はい」
「それは内斜視と言うそうなんだが、典型的な初期症状らしいんだ。どうやら最近よく転んでいたのも、腫瘍のせいらしくて……」


そんな……。
衝撃のあまり、うつむき唇を噛みしめる。

どうして稔が脳腫瘍なんかにならなくちゃいけないの?


「初期ってことは、治りますよね」


俊介が畳みかけるも、すぐに返事がない。
恐る恐る顔を上げおじさんを見つめると、顔をゆがませ涙をこらえているのがわかった。
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