この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「半分が一年以内に亡くなるんだそうだ」


おじさんが、どこか他人事のようにボソリとつぶやいたとき、言葉を失った。

どうして……。
これから私たちには楽しい未来が待っているはずだったのに。

一年以内にいなくなってしまう可能性があるなんて、到底受け入れられない。


つい先日まで、一緒に笑っていたんだよ? 

一緒に走って……。気分が悪くなった私を気遣ってくれていたんだよ?


待合室でおじさんと別れたあとも呆然として動けない私を、俊介は待っていてくれた。
ただ手を握って、なにも言わずに。

なにも口にせずとも、彼にはこのつらい気持ちは伝わっている。

だって俊介も同じように苦しいはずだから。


「里穂。これから毎日通おう」
「うん」


もちろん。一秒でも長く稔に寄り添い、励ましたい。


おじさんの話では、明日には面会謝絶の措置が外れるらしい。

稔は、意識は戻っているものの、動けないことにひどく落胆しているようだ。
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