この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「糸井くんはきっと復活してきます」


余命宣告されているのに、そんな希望は甘いかもしれない。
それでもそう信じたい。


「そうか……。試合のエントリーだけど……」
「そのままにしておいてください」


七月の試合までは、もう一カ月ちょっとしかない。

その試合に——いや、今後の試合に、稔が出場できることはないのかもしれないけれど、一縷の望みは捨てたくなかった。


「わかった。そうしよう」


顧問が離れていくと、気が緩み涙があふれそうになる。

どうして稔がこんなにつらい目にあわなくちゃいけないの? 

俊介と一緒に必死に陸上に打ち込んできた稔に、悪いところなんてひとつもなかったのに。

神様は残酷すぎる。

それでも泣いている場合じゃない。私が稔を支えるの。

そう気を取り直した私は、唇を噛みしめグッとこらえた。



部活が終わるとすぐに駅にダッシュ。


「里穂。あとでどんだけ泣いてもいいから——」
「わかってる」
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