この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「ノートは里穂がコピーしてくれるんだよね」
「メッセージ読んだの? スマホ使えるの?」
「個室はOKなんだってさ」


それならこれからも送ろう。


「そっか。きれいに書いておくね」
「ガトーショコラもな」


俊介が口を挟むと、稔は首を傾げる。


「なんのことだ?」
「とぼけるな。それだけ読んでないって不自然だろ」


と言いつつ、俊介は噴き出している。
私も声を上げて笑った。


あぁ、いつもとなんら変わらないのに、どうして稔は入院なんてしているんだろう。
夢ならいいのに。


それからふたりは、よくやっているゲームの話をしていた。

私はその様子を見ながら、時々相槌を入れ、笑顔を作ることだけを心掛けていた。


三十分ほど話したところで、「ふっ」と稔が小さなため息をついたのに気がつき、今日は帰ることにした。
きっと疲れている。


「それじゃあ」


俊介が挨拶を交わしドアに手をかけると「俊介」と稔が呼び止めるので振り向く。
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