この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。

激しい動揺

「ねぇ、糸井くんなかなか復帰しないね」


それから一週間。
部活に行くと多香美が私に話しかけてくる。

病名がはっきりしたので、先生には伝えられているらしいが、退学はしていない。

それは、いつか戻れるはずだという稔の両親の願掛けのような気もする。

そして生徒にはしばらく休みだと伝えられているだけで、詳しいことは明かされていないので、多香美も稔が脳腫瘍を患っていることを当然知らない。


「そうだね……」
「里穂、お見舞いに行ったんだよね。陸上部の皆でも行く?」


それを聞いてドキッとした。

あれから毎日顔を出してはいるものの、調子が悪いときは十分くらいで息が上がってしまうこともある。

私と俊介だけならそこでさっと切り上げて帰ってくればいいが、大勢で押しかけたら稔は無理をするだろう。
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