この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
おじさんはチラリと稔を視界に入れてから「外で」と促した。

私たちはおばさんを残し一旦廊下に出て、ナースステーション横の広場で話を聞いた。


「脳に腫瘍があることをお医者さんに話してもらったんだ。その治療のために放射線治療をすることも。そうしたら稔が『手術するのか?』と聞くので……」


おじさんはそこで大きく息を吸い込む。


「難しい場所にあるから、放射線治療になると正直に話してもらった。稔は幼い子供じゃない。嘘をついたところですぐにバレる」


その通りかもしれない。
スマホを持っていればたくさんの情報が入ってくるし、私たちだって実際、情報収集をした。


「それで?」


俊介が促すと、おじさんは再び口を開いた。


「難しい場所にあるということは、治らないってことじゃないのか?と興奮しだしてね。そんなことはひと言も言わなかったんだけど、なにかを察したのかもしれない」
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