この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
おじさんはそこまで言うと、口元を押さえ声を殺して涙を流し始めた。

なんて残酷な現実なんだろう。

脳腫瘍を患った稔も、息子の命が短いと知ってしまった両親も、その悲しみはどれだけ深いのだろう。

そして私も、そのときの稔の気持ちを考えたら、こらえきれなくなり涙を止められない。


「稔が、自分の命の期限について知るのは時間の……。あぁぁ……」


おじさんの言葉が続かない。


「おじさん……」


目を赤くした俊介がおじさんの背中をさする。


「わかってしまうんだろうね。それでも放射線治療をすれば、少しは……」


もうそれ以上聞き出すのは酷だった。

そして私も俊介も、その治療ができたとしても完治しないことを知っていた。


「おじさん。しばらく俺たちが代わるんで、おばさんと一緒に休んでください。まだこの先は長いんですよ。簡単に稔を死なせたりしません」

「ありがとう、俊介くん」


おじさんは俊介の手を握り、深く頭を下げた。
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