この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
治らないかもしれないと感じただろう稔の気持ちを思うと、いたたまれない。

それでも、戦うしかない。
放射線しか選択肢がなかったとしても、あきらめるわけにはいかない。

だって稔は私たちの大切な親友なんだもの。

お願い、生きて。

無性に稔に触れたくて布団から出ていた彼の手を握ると、微かに動いた。
でも、目を開けることはない。


「稔。頑張ろうね」


私がつぶやくと、彼の手に力がこもった気がした。


その晩は、二十一時すぎまで病室にいた。
稔は目を覚ますことはなかったけれど、心配で帰れなかった。

面会時間は二十時まででとっくに過ぎてはいたけれど、あんなことがあったあとなので、特別に許可をしてもらえた。

そして告知をしたばかりなのでということで、今晩付きそうことになっているおじさんとおばさんと交代して、病院を出た。
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