この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「稔……」
思わず稔の名を口にすると、俊介は私の左手をサッと握る。
小さな頃は手をつなぐこともよくあったけど、大きくなってからはなかったので驚いてしまう。
「里穂の右手は稔とつながってる。俺たちは三人でひとチームなんだ」
「……うん」
私は自分の右手を、さっきの稔の手の感触を思い出しながら、ゆっくりと握った。
翌日も部活が終わると病院へと走った。
「稔」
病室のドアを開けた瞬間、昨日とは打って変わって表情をなくした稔がベッドに横たわっていた。
目はうつろで私たちのことをとらえようともしない。
まるで見えていないかのようだ。
そして右目は相変わらずだった。
付き添いのおばさんに頭を下げベッドに近づいていつものように話しだす。
「今日ね、陸上部の皆が稔に手紙を書いてくれたんだよ」
私が手紙の束を差し出すと、俊介が続く。
「まあ、俺たち陸上バカだから、文章は残念かもしれないけどさ、皆、稔の復帰を——」
「俊介になにがわかる」
抑揚もなくつぶやく稔に目を瞠る。
思わず稔の名を口にすると、俊介は私の左手をサッと握る。
小さな頃は手をつなぐこともよくあったけど、大きくなってからはなかったので驚いてしまう。
「里穂の右手は稔とつながってる。俺たちは三人でひとチームなんだ」
「……うん」
私は自分の右手を、さっきの稔の手の感触を思い出しながら、ゆっくりと握った。
翌日も部活が終わると病院へと走った。
「稔」
病室のドアを開けた瞬間、昨日とは打って変わって表情をなくした稔がベッドに横たわっていた。
目はうつろで私たちのことをとらえようともしない。
まるで見えていないかのようだ。
そして右目は相変わらずだった。
付き添いのおばさんに頭を下げベッドに近づいていつものように話しだす。
「今日ね、陸上部の皆が稔に手紙を書いてくれたんだよ」
私が手紙の束を差し出すと、俊介が続く。
「まあ、俺たち陸上バカだから、文章は残念かもしれないけどさ、皆、稔の復帰を——」
「俊介になにがわかる」
抑揚もなくつぶやく稔に目を瞠る。