この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「俺はもう走れないんだ。放射線やったって頭に爆弾抱えたままなんだぞ。学校に復帰できたとしても、走るなんて……」


稔の目尻から涙がスーッとこぼれ、シーツに吸い込まれていく。


「焦るな。今は一歩ずつ進むしか——」
「きれいごとを言うな!」


稔が顔をゆがめ、声を荒らげた。

おばさんが近寄ってこようとしたが、俊介は手で制したあと続ける。


「俺たちは一番近くで稔の努力を見てきた。お前のド根性を知ってる。だから、俺も里穂も稔が絶対に復活してくると思ってる。当たり前に、思ってる」


俊介は私の気持ちも代弁してくれた。

余命宣告を聞いたあとも、稔がまたハードルを跳んでいる姿をどうしても思い浮かべる。

そして頑張り屋の稔なら奇跡を起こすと信じてる。


「毎日走れているくせして、俺の気持ちなんてわかるかよ! お前を見ているとイライラするんだよ!」
「稔!」
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