この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
昨日したように稔の手を握ると、彼はハッとしたような顔をする。

そのとき一瞬、いつもの優しい稔が戻ってきた気がしてホッとした。


「里穂。俺……」


冷静さを取り戻した彼は、そこまで言うと口をつぐんだ。

その続きはなんだったのかわからないけれど、その苦しげな表情から俊介に申し訳ないと思っていることがひしひしと伝わってくる。

やっぱり、彼は優しい。


「大丈夫。俊介は全部わかってる」


あなたがどうしてあんな言葉を吐いたのかも、そしてどれだけ後悔しているかも。

そう伝えたものの、彼はなにも言わなかった。


病室を出て一階まで行くと、エレベーターホールで俊介が待っていてくれた。


「里穂。稔は?」
「うん。少し落ち着いたか、な。俊介、稔はね——」
「わかってるよ」


よかった。あれが稔の本心じゃないことをちゃんとわかっているんだ。


「俺たちにできることないのかな。このままアイツが逝くのを待つなんてできない」
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