この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
それは私も同じ気持ち。
どうしたら稔の命をつなぎとめられるんだろう。

彼の命が救われるなら、なんだってするのに。


「……うん」


曖昧な返事しかできないのは、その方法がまったくわからないから。

なんて無力なの?

最先端の医療技術を集めた大学病院でさえ難しいという彼の治療を、私たちがなんとかできるはずもない。
でも……。


「ずっと稔のそばにいる」


私がつぶやくと、俊介は大きくうなずいた。




翌日からは、部活のあと俊介と一緒に病院には行ったが、彼は一階まで。

私が稔の病室に顔を出して戻るのをずっと待っている。


状況を受け入れられない稔のことをよく理解している俊介は、これ以上稔の心を乱したくないと遠慮しているんだ。

今まで通り毎日走っている俊介に、嫉妬するのは仕方がないこと。

一日中ベッドの上で、ただ白い天井を見上げていることしかできない稔のつらさは、私たちの想像以上だろう。
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