この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
「チビはこっち」


けれども電車に乗り込むとすぐ、俊介が私の手を引き、ドアの横についている手すりにつかまらせてくれた。

吊革につかまるのも大変だと知っているからだろう。

でも『チビ』はないでしょう?

頬をわざとらしくふくらませ怒りをアピールしても、俊介は素知らぬ顔。

だけど、他の乗客から守るように私の前に立ち、隣に立った稔と話を始める。


俊介はツンツンしているくせして本当は優しい。

その優しさを前面に押し出してくれたらいいのにと思うこともあるけれど、私だって彼に優しくしているわけではない。

長い付き合いのせいでなんとなく照れくさい。

だから、俊介ももしかしてそうなのかな?なんて勝手に思っている。

今日は私が少し遅れたせいで、いつもより混雑している。

おまけに、近くにタバコのにおいをプンプンさせたサラリーマンがいたので、気分が悪くなってしまった。

俊介はずっと壁になってはくれたが、さすがに匂いをシャットダウンはできない。


「はぁ、気持ち悪い……」
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