この想いが届かなくても、君だけを好きでいさせて。
泣いてばかりいてもなにも解決しないとわかっているのに、どうにも涙が止まらない。

俊介だって心の中では泣いているに違いない。
それでもこらえているんだ。


私がやっとのことで泣き止むと、彼は私の頭を撫でた。



翌日は暑いくらいのいい天気だった。


「関戸くん、なんだか最近顔つきが違うね。タイムもびっくりするくらい伸びてる」


多香美が何本も走り込みをしている俊介に視線を送りながら、感嘆のため息をついている。


「うん。すごいよね」


きっと、稔の悔しさを背負って走ってる。
稔の分も自分が走ると。

稔になにをしてあげたらいいのかわからないまま、時間だけが過ぎていく。
私も俊介も焦っていた。


学校から病院へと向かう途中、電車の中で俊介が口を開いた。


「俺、陸上やめようかと思う」
「えっ? どうして?」


突然の申し出に、口をあんぐり開ける。

今までタイムが伸び悩んだこともあったけれど、こんなことを言ったのは初めてだった。

それに、ついさっきまでのあの必死の走りを見ていたら、この発言は信じられない。
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