臥薪嘗胆の主



「話は僕が聞いておくから、楼は見回り頼んだよ。」






「…はい。」





夜さんに言われるまま、変わってない施設を歩く。










「…楼にぃ?」







懐かしい呼ばれ方…








「蘭?」






振り向いたそこには、俺の記憶の中での小さい蘭ではなく、成長した蘭が立っていた。










「楼にぃ!会いたかった!」






蘭は俺が施設にいた頃、妹のように思っていた子。









「俺もだよ。」






蘭は、俺が出て行った日のことを知らない。









…知られたくない。











< 209 / 225 >

この作品をシェア

pagetop