臥薪嘗胆の主
「話は僕が聞いておくから、楼は見回り頼んだよ。」
「…はい。」
夜さんに言われるまま、変わってない施設を歩く。
「…楼にぃ?」
懐かしい呼ばれ方…
「蘭?」
振り向いたそこには、俺の記憶の中での小さい蘭ではなく、成長した蘭が立っていた。
「楼にぃ!会いたかった!」
蘭は俺が施設にいた頃、妹のように思っていた子。
「俺もだよ。」
蘭は、俺が出て行った日のことを知らない。
…知られたくない。