臥薪嘗胆の主
「ここにいたんだ。」
白い髪は、夕日に照らされ綺麗に輝いていた。
「…夜さん。」
そう呼ぶと、目線だけこちらに向けられた。
「さっきは…あたってしまって、ごめんなさい…。」
頭を下げると、髪をくしゃくしゃとされた。
「ばーか。」
「な…っ?!」
「…楼、馬鹿。」
「ガキ。」
3人がかりでみんな言ってくるから、ついにやけてしまった。
「帰るよ。」
俺は、あの場所に帰っていいのだと。
「はやくしろよ、楼。」
差し伸ばされた手を、握っていいのだと。
─その幸せに、甘えていいのだと…。