たった7日間で恋人になる方法


『…え、萌、起きて』

どれくらいたったのか、軽く肩を揺さぶられ、徐々に眠りの縁からゆっくり浮上させられる。

『ん…私…寝ちゃった?拓真君…今、何時?』
『もうじき22時になる』
『え、そんなに?』
『会計はもう済ませたし、タクシー呼んだから…立てる?』
『…うん』

立ち上がった瞬間に少しよろけてしまったけれど、隣に立つ拓真君に支えてもらって、何とか店外に出た。

少し寝たせいか、足元はおぼつかないけれど、ほろ酔い気分で、少し肌寒い夜気も気持ちが良い。

店の外には、マスターが呼んでくれたらしいタクシーが一台、ウインカーを点滅させて停まっていた。

『また、是非お二人でいらしてください』

丁寧にお辞儀するマスターに見送られながら、タクシーに乗りこむと、駅前から一本入った通りだからか、車は比較的スムーズに走り出す。

何となく罪悪感にかられて、真っすぐ正面をむいたまま、拓真君に話しかけた。

『なんか…マスター、完全に誤解したよね?私達のこと』
『そうかもな』
『かもな…って、拓真君は良いの?』
『良いも悪いも、だとしたら、俺たちの演技は完璧だったってことだろう?』
『それは…そうだけど』
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