たった7日間で恋人になる方法
お店を出ても、演技し続ける拓真君は、『それに』と、続ける。

『…だいぶ、慣れてくれたよね?萌』

不意に、座席シートに投げ出したままだった、左手を握られ、また心臓が跳ね上がッた。

『あ、あのね、拓真君…もう、お店出たし…演技する必要は』
『萌』
『は…い?』
『もしかして、俺がこうやって君に触れるの、なんともないと思ってる?』

隣の拓真君を見上げると、少し困惑したような表情で、見返される。

『俺的にも、琉星を演じたままの方が、いろいろと…その、都合がいいんだ』

それは、私が拓真君に慣れるように、拓真君もまた琉星を演じることで、私に慣れようとしてくれている…ということなのだろう。

考えてみたら、あの、女性を苦手とする拓真君が、ここまで自然にできるのも、琉星になりきってくれているからこそ、なせる業なのかもしれない。

そう考えると、自分の為に一生懸命努力してくれている拓真君に、感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

それと同時に、いまだ消極的な自分の行動力に、いい加減辟易とした。

『ごめん…そうだよね、自分でお願いしておきながら、拓真君ばっかり頑張ってる…まだ割り切れてないのは、私の方なのかもしれない』
『いや、俺はそういう意味で言ったわけじゃ…』
『ううん、確かに私、拓真君に甘えてた…もっと、私の方だって努力すべきだよね』
『も、萌…?』
< 101 / 274 >

この作品をシェア

pagetop