たった7日間で恋人になる方法
6.金曜日
金曜日

数年前に社長の発案で設けられた、隣の係との間に設けられている、通称”ブレイクゾーン”。

入口以外の3方向をガラス面で仕切られた狭いスペースは、ちょっとしたミニキッチンやコーヒーサーバーが置いてある。

執務室の真横に位置しながらも、きちんと休息が取れるようにと、手元の位置までは摺りガラスになっていて外からは見えないように配慮され、それより上部は透明ガラス。

休憩中も急な来客や案件に迅速に対応できるように、常時執務室を見渡せるようにできている。

そこから、午後の眠気覚ましに、少し苦めに作ったカフェオレを飲みながら執務室を眺め、耳をそばだてた。

『時枝さん、昨日言っておいた書類、まだ出てないみたいなんですけど?』
『あ、すみません、今出そうかと…』
『遅れてるんだから、早く提出してもらわないと困りますよ』
『ハイ…次から気をつけます…』

『時枝!営業2課の先月の燃料清算、どうなってる?』
『えぇっと、あ、まだ月末の日報が揃ってなくて…』
『何やってんだ!?さっさと確認しとけって、言っといただろ!』
『す、すみません、今直ぐ、取りに行ってきます』

今朝も朝から、ダメダメっぷりを惜しみなく発揮している、拓真君。

相変わらずの髪形に、太めの黒縁眼鏡、大げさなくらい背を丸く縮めたような猫背で、常  にオドオドとした受け答え。

少なくとも、昨夜の拓真君と、同一人物とは到底思えない。
< 103 / 274 >

この作品をシェア

pagetop