たった7日間で恋人になる方法


今夜はいよいよ、明後日に向けた本番を前に、拓真君の容姿の改造について検討する日として設定していた。

別に、特別オシャレじゃなくても、やっぱり彼氏にはそれなりの恰好をして欲しいから。

二人で出かけること自体は、いい加減慣れてきたけれど、昨日の拓真君を思い出すと、妙に胸の奥がざわざわして、なんだか落ち着かない。


『…大丈夫かなぁ』

定時まで、後1時間という頃、業務上必要な資料を取りに、地階の書庫に行っていた美園が、戻ってくるなり独り言のように、つぶやいた。

『どうかしたの?』
『あ~うん、今、書庫から出る時に、入れ違いに時枝君と入澤さんが入って行って…』
『なんで、秘書課の入澤さんが書庫に?』
『そうでしょう?何か妙な組み合わせで、おかしいなって思ったら、何故かドアに立ち入り禁止の札まで下げて、挙句に鍵までかけちゃうし…』

秘書課の入澤さんと言ったら、社内1,2を争う美貌と抜群のスタイルを兼ね備えた女性。

そんな彼女と庶務係の時枝君の接点など全くと言ってほど無いし、そもそも書庫で作業なんて…ありえない。

『こりゃ時枝、喰われるな』

目の前で、菊田さんがにやりと笑う。

『く、喰われる?』
『そう、入澤さんのちょっとした”お遊び”だよ。彼女、あの美貌だから、男には困ってないけど、たまに純情そうな男見つけると、からかってみたくなるんだよね』
『ふ~ん…菊田さんも喰われたくちだったりして』

美園が、面白がって聞くと、『バッ、バカ言うなよ、俺のような普通な男は論外だよ』と、菊田さん。

『時枝みたいなのが、一番狙われやすい』

美園と菊田さんの会話の途中で、咄嗟に立ち上がり、その勢いで机上にあったペン立てを倒してしまう。
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