たった7日間で恋人になる方法
『萌?…どうしたのよ、突然』
『私、ちょっと、行ってくる!』
『え…萌!?』
美園が何か言っていたけれど、もう返事する余裕もなく走り出していた。
執務室を出て、エレベータホールに向かい、ちょうど降りてきた扉に滑り込むと、ゆっくり閉まるドアさえももどかしく、閉扉ボタンを連打する。
女性が苦手な拓真君が、狭い書庫に閉じ込められ、強引に迫られている姿を想像すると、いてもたってもいられなくなった。
エレベーターが書庫のある地階まで降りると、開き切らない扉から飛び出し、月曜日とは逆に左側に伸びた薄暗い廊下をまっすぐ進み、奥ばった場所にある灰色の扉を目指す。
突き当りにある書庫の扉の前まで来ると、美園が言っていたように上部のフックには【作業中の為立ち入り禁止】と書いてある札がかかり、ダメ元でドアノブを廻すと、しっかり鍵がかかっていた。
”拓真君、本当にこの中にいるの…?”
扉の前でしばし立ち尽くし、目の前の部屋の内部を思い起こす。
社内の重要書類から、各種様々な資料が保管されているそこは、自身も時々入ることがあるけれど、部屋の中は日中でも薄暗い上に、いくつもの棚に囲まれて通路も狭く、人一人が通るのが精いっぱいの場所。
…どうしよう?
いざ、勢いでここまで来たものの、怖気づいてしまう。