たった7日間で恋人になる方法
『…萌…さん?』
扉の中から、小さな弱弱しい声で名を呼ばれ、ハタと我にかえると、急いで書庫の扉を開け中に入る。
相変わらず薄暗い室内は、古い書籍の独特な匂いが充満していて、少し埃っぽい。
『拓真君?…どこ?』
室内を見廻し、書棚で仕切られたいくつかの通路の間を覗く。
一番奥ばった書棚の足元に男性らしき足が見えた。
『拓真君!大丈夫!?』
狭い通路を進むと、そこには壁に背を預け、顔を伏せてうなだれている拓真君がいた。
…ドキッ
近づきよく見れば、首から外されたらしきネクタイと黒縁眼鏡は共に床に落ち、ワイシャツは上から3つほどボタンが開かれ、その隙間から胸元が少し見えてる。
『な…』
その胸元から首筋の辺りにチラリと見えた紅緋色は、さっき挨拶を交わした入澤さんの口紅の色と似ていて、思わず目を逸らしてしまう。
胸の奥がぎゅと痛み、なぜか泣きそうになった。
『…どうして、ここに?』
下を向いたまま、未だ表情の見えない拓真君に問われる。
『…美園から、拓真君と入澤さんが書庫に入っていくのを見たって聞いて…まさかこんなこと…』
声が震えてしまう…傷ついてるのは拓真君なのに、まるで自分が傷ついたように胸が苦しい。