たった7日間で恋人になる方法

『大丈夫…もう平気だよ』

私の行動に驚いたのか、拓真君の腕の力が一瞬緩んだ気がしたけれど、次の瞬間それ以上の強い力で抱きしめられる。

『ありがとう…萌』
『…少し、安心した?』
『…ああ』

夕刻前の執務時間内。

地階の書庫で、異性である同僚に抱きしめられ、自分も抱きしめ返す。

冷静に考えたら、なんてドラマチックな、シチュエーションなんだろう。

しかもこれは現実で、ゲームの中の出来事じゃない。

その証拠に、たった今触れ合っている場所から、直に拓真君の温もりを感じている。

温かくて心地いい、妙にホッとするこの安堵感。

”でも”

…と、さっきからうるさい程にトクトクと波打つ自分の胸の鼓動に、警告音を鳴らす。

これは友人として、彼の不安を少しでも和らげるための”抱擁”であることを、忘れてはいけない。

仮初めの恋人とはいえ、あくまでも拓真君は会社の同僚であり、ただの友人。

それに、この関係も、明後日が無事に終われば、解消されるのだから…。
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