たった7日間で恋人になる方法


今日は金曜日ということもあり、就業時間が過ぎれば、皆の退社は通常より早め。

同僚の女性たちは、なにやら篠原さんの持ってきた合コンに参加するらしく、終業のチャイムと同時にいそいそとめかしこんで行ってしまい、美園はというと、例の彼と会うのか、気が付けば、早々に帰ってしまっていた。

既に、誰もいなくなった更衣室で、ロッカーの扉を閉めて、小さな溜息を一つ落とす。

”…どんな顔して会ったらいいの?”

1時間ほど前に起きた出来事が、未だに脳裏に色濃く焼き付き、単に記憶だけでなく、触れた胸の感触や腕の力までが、生々しく残っている気がする。

これから拓真君と、いつものように待ち合わせて、いつものように、仮初めの恋人として接しなければならないのに…”普通”に、接することができるのだろうか。

不安に思いながらも、これは自分で決めたことで、拓真君を巻き込んだのも自分。

今更、逃げ出すことなど、できるはずもなかった。

仕方なくlineで今から会社を出ることを告げると、重い足取りのまま更衣室を出る。
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