たった7日間で恋人になる方法

『金曜だっていうのに、随分浮かない顔だな』
『…牧村さん』

1階の階段を降り切ったあたりで、今、最も会いたくない人に会ってしまった。

『お疲れ様です』
『お疲れ、森野さんも、今帰り?』
『…はい』
『奇遇だね…俺も偶然、今帰るとこなんだ』

いかにも待っていたようなタイミングで現れた牧村さんは、足を止めない私の横を話ながら、並行して歩く。

『別に特別偶然じゃないですよね、この時間帯は皆さん同じように退社されますから』
『手厳しいね』
『また変な噂が流れたら、お互い困りますし』
『ああ、昨日のアレか…確かにあの程度で噂にされたら、たまったもんじゃないな…まぁ、俺的には、君となら噂になっても構わないけど…?』

こちらの反応を確かめるような視線を感じるも、敢えてそちらは見ずに正面を向いたまま淡々と答える。

『私は、構います』
『もしかして、周りからの嫉妬や妬みが怖いのかな?』
『凄い自信ですね』
『他に理由が思い当たらないのでね』
『私が、あなたに全く興味がないからです』
『アハハ…やっぱり君は面白い子だ…まさか、俺の気を引こうと、わざと言ってる…とかじゃないよね』
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