たった7日間で恋人になる方法
『自分よりハイスペックな男と付き合ってる女を口説き落として、落ちた瞬間アッサリと捨てる…そうすることで、その男に勝った気になってるなら…フッ、くだらな過ぎる』
『その声…お前まさか…』
何かに気が付いたらしい牧村さんは、驚きの表情を浮かべると、言葉を失ってしまったように黙り込む。
『これ以上彼女に近づくなら、今撮った画像を持って上層部に働きかける…余程の馬鹿じゃなきゃ、その意味わかるだろ』
冷酷なまでにそう告げると、ボー然と立ち尽くす牧村さんを一瞥し、後ろに立つ私の方に向き直ると『行こう』と背を押され、小ルームから出る。
そのまま黙って通用口を出る拓真君に続いて歩きながら、その背を見つめて、何故だか目の前を歩く拓真君が、知らない人のように感じてしまう。
何となく不安に駆られ、黙々と歩く拓真君に話しかけた。
『拓真君?…あの…さっき牧村さんに言ってたこと…』
『ああ、心配しないでいいよ、あんなのハッタリだから…ああ言っておけば、二度と萌さんに近づかないだろうからね』
『あ…うん』
本当に聞きたかったことは他にもあったのだけど、何故かそれ以上聞いてはいけない気がして、口を噤んでしまう。
実のところ、今はただ、あの場に拓真君が助けに来てくれたこと…それに、あれだけ心配していたわりに、ギクシャクせず普通に話せていることが、単純に嬉しかったから。