たった7日間で恋人になる方法


『…ごめん』

会社を出てから、何故か一言も言葉を発することもなく、最寄り駅近くにある、小さな噴水のある公園まで来ると、そこにあるベンチに座らされ、深々と頭を下げられる。

『何で、拓真君がそんなに謝るの?助けてもらったのは私の方なのに』
『いや、僕がもっと早くに対応してたら…』
『仕方ないよ、むしろあそこにいるって気づいてもらえただけで、感謝だよ』
『……』
『私のlineに気づいて、探しに戻ってきてくれたんでしょ?』
『…ああ』
『そのおかげで、何も無かったんだから…ね?気にしないで』

多少の怖さはあったけれど、結局何もされてないことを強調して、努めて明るく話をするも、何故か自分自身に納得できないのか、また頭を下げる拓真君。

『…本当、ごめん』

私は困ったように小さく溜息をつくと、視線を目の前にある小さな噴水に移す。

定期的に噴出する水は、この時期この時刻になると、七色にライトアップがされ、遠目に見ていた女子高生達が水が出る度に歓声を上げていた。

『もう謝らなくて良いって…それに』
『ん?』
『今日の…書庫では私が、その…間に合わなかったし』

言いながら、書庫で見た拓真君の姿を思い出し、今度は私が落ち込む番になる。

『あれは…』
『だから、おあいこ…でしょ?』
『あいこか』
『そ、お互い助け合ったんだけど、お互いちょっと間に合わなった…ってことで、ね』
『…そうだな』

そういうと、何気なく顔を見合わせて、笑い合った。

良かった…いつもの拓真君だ。

さっき見た別人のような拓真君ではなく、今はこの一週間で見てきた拓真君で、ホッとする。
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