たった7日間で恋人になる方法
『…それなら、一緒に服とか見たいかも』
『服?』
『あ、私のじゃなくて”彼の”ね、なんかそういうのって特別な感じするでしょ?彼女の特権っていうか…あ、でもこれって普通、デートにはならないのかな?』
『そんなことはないだろうけど…そんなのでいいのか?』
何故か訝し気に首を傾けられる。
実のところ、デートの定義はよくわからないけれど、どこか特別な場所に出かけることより、他愛もない日常の延長のように、好きな人と一緒にいる時間に憧れてた。
『……ダメかな?』
『萌がそれでいいなら、俺は構わないけど……って、正直”クルーザー”とか言い出したら、どうしょうかと思ってたけど』
『まさか!ゲームの世界と現実の区別くらいできてるよ』
『なるほどね…でもそう考えると、見くびられたもんだな、俺も』
『じゃあ、もし”クルーザー”って言ったら、叶えてくれたの?』
『まあ…遊覧船くらいならな』
『何よそれ、クルーザーじゃないし』
私が笑うと、”どっちも船だろ”と、真顔で言う拓真君が可笑しくて、また笑ってしまう。
大丈夫。
微かな緊張感は続くものの、この調子でいけば、明日の本番にはだいぶ慣れて、完璧な恋人を演じることができそうだ。