たった7日間で恋人になる方法
『…萌』
不意に名を呼ばれ、思わず『な、何?』と声が裏返ってしまった。
隣を見上げると、やけに真面目な顔の拓真君が正面を見たまま話しだした。
『明日もし…もし予想外に良い男が現れたら、どうする?…向こうが連れてくる男』
『どうするって?』
『例えば、琉星みたいな男だったら…』
『そんな人は、いないでしょ』
即座に一蹴に付した。
ゲームの中の住民は、現実には絶対有り得ないほどの、理想の偶像。
だからこそ、自分のような妄想女子が嵌るのだから、リアルに存在するわけがない。
それでも、拓真君は真顔で質問を続けてくる。
『もしも、万が一の話だよ』
『言ったでしょ?どっちにしても、3次元の男性には興味ないって』
『…そこは、やっぱり変わらないんだな』
『どういう意味?』
『いや…』
拓真君の質問の意図がわからず、もう一度見上げるも、もうこの話を続ける気は無いらしく、黙って正面を見続けてる。
もう500メートルもすれば、今日待ち合わせた駅ビルが見えてくる。
本当は拓真君のおかげで、リアルな恋愛も悪くはないと思い始めていたけれど、敢えてそのことは言わなかった。
いや、言えなかった…というのが、正直なところなのかもしれないけれど。