たった7日間で恋人になる方法


お互い利用駅は同じ沿線なのだけど、今いる駅からはそれぞれが反対の進行方向なので、ここで解散。

電光掲示板を見れば、私の乗る電車が6分後の先発で、その3分後に拓真君の乗る電車が到着するようだ。

『萌の降りる駅の降り口って、どっち側?』
『え~っと…進行方向に向かって前の方かな』

そういうと、今日ずっとそうだったように自然に私の手を引き、そのままホームの端まで歩き出す。

プラットホームはこの時間にしては人気は少なく、中央の階段付近に数人いるだけで、後はベンチで酔っ払いが一人、寝ているだけ。

歩く速度はやっぱり私に合わせてくれているのか、凄くゆっくりで、歩きやすい。

辺りは妙に静かで、朝からずっと降り続いていた雨音だけが、やけに大きく響いていた。

ホームの端に着くと、線路に向かって立ち、お互い黙ったまま、ホームの屋根に打ち付ける雨の音に耳を傾ける。

何気なく隣に立つ拓真君を見上げると、その視線はまっすぐ正面を見据え、何やら物思いに耽っているようにも見えた。

その意外と整っている鼻筋や、男性の癖にきめ細やか過ぎる肌。

一週間前には、目を合わせるのも緊張していたのに、今はこんなにも近くにいて、むしろ居心地の良い安心感さえある。
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