たった7日間で恋人になる方法
『この際、諦めて生身の男、紹介してもらったら?リアルな恋愛も、そう悪くはないよ?一度経験してみたら、バーチャルな男よりずっと…』
『ううん、紹介は受ける気はないから』
『はい?』
『実は私、逃げ切る方法も、ちゃんと考えてきたし』
『…逃げ切る方法?』
『ちょっとお金はかかるけど、この際、背に腹は代えられないしね…』
『萌!前…』

通路の曲がり角で、目の前に突然現れた男性とぶつかってしまう。

『ワッ』
『イタッ』

ぶつかった勢いは大したことは無かったのだけど、突然現れたことに驚いてしまい、バランスを崩して軽く尻もちをついてしまった。

見上げると、同じ課の時枝君が、おどおどとこちらを見下ろしてる。

『だ、大丈夫…ですか?』

反射的に、手をこちらに指し出そうとして、直ぐに何かを躊躇うように引っ込めてしまう。

『…え?』
『あの、すみません、僕…ちょっと急いでるんで…』

そういうと、今美園と歩いてきた廊下を、一目散に走り去っていく。

『何よあれ?手ぐらい貸してくれたって良いじゃんね?』

美園が、その後ろ姿を見送りながら、軽く文句をつける。

『いいの、私がぼーっとしてたのが悪かったし』

私は、自らの力で立ち上がりながら、心の中でにやりと微笑んだ。

”…やっぱり、彼にするしかない”

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