たった7日間で恋人になる方法

『違う…そんなわけないっ。だって、その如月って人は、確か去年…』
『去年の春前、”問題起こして解雇された男”…だろ?』

私が口に出す前に、拓真君が、その先を続ける。

更に『対外的には…そういうことになってるだけだけどな』と単調に付け加えられた。

次から次へと明かされる拓真君の本性に、自分の気持ちが追い付けず、そのモヤモヤがそのまま彼への不信感に変わる。

それでいながらも、今日気付いたばかりの彼への想いが心の奥底で燻り、戸惑いの感情が逡巡を繰り返す。

『…何よそれ…”対外的には”って、どういう意味?それに、もしあなたがその男だとしたら、私を…ううん、職場の皆をずっと、騙してるってこと?』

ともすれば、溢れそうになる感情を抑えながら、軽蔑の眼差しで見つめ返す。

私の様子を見て、拓真君は小さな溜息を吐くと、『噂くらい聞いた事あって当然か…』と、呟いた。

『萌』

睨みつけるように拓真君を見上げれば、『頼むから、順を追って、説明させてほしい』と、懇願される。

その真剣な眼差しに、甘くも簡単に揺らぎそうになってしまうのは、自分がもう彼の手中に落ちてしまっているからなのかもしれない。

私の無言を了承と捉えたのか、拓真君は静かなトーンで、話しだした。
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