たった7日間で恋人になる方法

『…女性も、選び放題だったしね?』

ついポツリと、嫌味のように口から零れ出てしまった。

ムッとされるかと、拓真君を見れば、何故か悲しい目で笑みを返される。

『…牧村から聞いたのか?』
『牧村さんだけじゃない…皆、知ってることよ』

存外自分の口から、冷たい声音が出てしまった。

しかも正確には、上層部だけの噂話の範疇で、自分の周りでは、そう話に出ることは無かったのだけれど。

『否定はしないよ…事実、専務付きになってからは、やけに女性が寄ってきたからね、さっきも言ったように、俺もノーマルだし、女性に迫られて悪い気はしない』
『ほら、やっぱり…』
『ただ、当時はそんなことより、仕事の方が面白くて、ほとんど相手にはしなかったけどな』
『嘘』
『嘘じゃない』
『知ってるのよ、あなたが社内で何してたのか、解雇された原因だって…』

牧村さんや斎藤主任の話を思い出し、改めて非難の目を向けると、小さく息を吐き、組んでいた腕を解くと、寄りかかっていた壁から背を離し、姿勢を正す。

『萌、信じられないかもしれないが、噂になっている話のほとんどは、俺じゃない』

凛とした佇まいでジッと見つめられ、つい絆されそうになり、咄嗟に視線を窓の外に移した。

『今更、何言ってるの?みんな、如月って人がしたことだって、知ってるんだから』
『まぁそれはそうだろうな…真実を知ってるのは、俺と、当の本人と、相手の女性だけだし』
『当の…本人?』
『そうだ』

キッパリそう断言すると、一旦言葉を切り、今度はゆっくりと、言葉を続ける。
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